なでしこリーグ2部昇格をかけた、プレーオフ順位決定戦。
第1節、ホーム鴨陸でバニーズ京都SCと対戦し、0-2という窮地から後半3点を奪って劇的な大逆転勝利をおさめたオルカは9月4日(日)、アウェイの地、大和ゆとりの森にてEASTの最大のライバルでもある大和シルフィードと対戦しました。

大和シルフィードと言えば、レギュラーシーズンの7月3日(日)、オルカの無失点連勝を止めたチームです。
会場も同じゆとりの森。
オルカが勝利という忘れ物を置いてきた場所です。 

前回の対戦、明らかに相手の気迫が優っていました。
スタンドも熱い大和サポーターに加えて阿波踊り太鼓が入り、オルカが味わった初めてのアウェイ感でした。


プレーオフ第1節で勝点3を手にしたものの、この試合に敗れることがあれば、一気に形勢は逆転します。
なでしこリーグ2部自動昇格となる1位を確保するためには絶対に勝利しなければならない一戦です。
しかし、アウェイの地、しかも相手は大和シルフィード。
オルカが勝つためにはチームのみならず、サポーターも含めて相当な覚悟で臨まなければならない。
そういう思いでした。

なんとしても勝ちたい。それに呼応して、房総からも、また他の地域からもオルカを応援する人たちが続々と強い気持ちをもって大和に集結してくれました。
おそらくは200人を超えるサポーターが集まったと思います。
また、育成チーム・オルカ鴨川BU(ビーユー)の選手たちも全員バスに乗り、応援に来てくれました。
車内では応援練習、さらに今日トップチームが見るモチベーションビデオも見て来ました。
BUの中にはオルカの1・2年目の歴史を紡いできた選手もいます。
トップチームの選手にとって、BUの応援は心強く、大きな力になったはずです。

そして、今日は昨年の入れ替え戦のアウェイ熊本と同じく、応援団はバックスタンド側に陣取りました。
メインスタンドの場合、一番端の1ブロックしかオルカは座れないため、アウェイ感が漂ってしまいます。
もっともこの数の応援団は座りきれません。
また、バックスタンド側の方がネット越しの応援にはなるものの、選手に非常に近い位置で応援できるため、直接選手に思いも伝わるだろうという思いからでもあります。 
結果、バックスタンド側にまわったことで、ハーフウェーラインからオルカ側は全てオルカのサポーターで占めることができました。
これはきっと試合にも大きく影響したと思われます。

2016・9・4vs 大和シルフィード_382-S

チームも前の対戦とは全く違う気迫をピッチ内アップから見せていました。
試合もキックオフからオルカが主導権を常に握る展開。
大和シルフィードはカウンター攻撃を狙いますが、今日のオルカのデフェンスも非常に集中していて、ピンチの芽を次々と摘み取っていきます。相手に決定機らしいチャンスは作らせませんでした。
オルカが攻勢を続ける展開でしたが、前半得点は生まれず0-0。
雨模様の予報とは打って変わって、晴れ間がのぞき蒸し暑い天候となったことで、選手にとって過酷なコンディションではありましたが、オルカの足は最後まで止まりませんでした。

後半、オルカが引き続き試合を支配します。
大和シルフィードの選手の動きも疲れで鈍くなり、オルカがセカンドボールをことごとく拾えるようになりました。
そして、後半12分、14村岡真実選手のゴールでついにオルカが先制します。
その後もオルカが攻め続けますが、残念ながら、得点は生まれず、1-0で試合終了。
オルカが見事に勝利! 勝点を6に伸ばし、なでしこリーグ2部昇格に王手をかけました。

実は得点の入った後半12分。
これは7月3日(日)に相手、大和シルフィードに決められた時間と全く同じ時間です。
しかも、同じ左サイドからの展開。
いやはや、サッカーとはなにかおもしろいものです。 

※追記
考えてみれば、後半「12」分という、オルカのサポーター番号(永久欠番)の時間に決めたのも、オルカらしいですね!
本当にいろいろな思いのつまった、それがかたちとなったゴールでした。

2016・9・4vs 大和シルフィード_2461-S

この試合、オルカの選手たちは、オルカを支えてくれる全ての人たちのために勝利すべく、戦いました。
なでしこリーグ2部昇格を目指すだけなく、実はある特別な思いをもって戦っていたのです。 

安房天津駅前に「あぶらや食堂」という、むかしからの大衆食堂があるのですが、このご夫婦がオルカを熱く応援くださっていて、まるで選手のお父さん、お母さんのように、選手たちにおいしく栄養満点の料理を提供してくださっていました。
ホームゲームも、さらにアウェイゲームも応援に来てくださるほどで、28日の第1節でも声援を送ってくださっていました。

知らせが入ったのは9月2日の午前中でした。
「あぶらや食堂」のご主人が急逝されたのです。
選手たちが「お父さん」と慕っていたご主人。
突然の出来事に私も呆然としました。

試合前日の3日、しめやかにお通夜が営まれ、私も、選手2人とともにオルカを代表して参列しました。
「お父さん」の遺影。なんと、オルカTシャツを着ている写真でした。オルカの選手たちが「あぶらや食堂」を訪れた際、みんなで撮影した写真を遺影に使ったというお話しでした。

4日の大和も行くのを楽しみにしていたそうで、奥さんのたっての希望で、ご本人が愛用していたオルカTシャツをもって、縁者が応援に来てくださるとのお話しもうかがいました。

参列した選手とともに「明日はお父さんのためにも絶対に勝たなければならない!」と決意したのでした。

試合当日、 キックオフ数時間前。
ホテルのミーティングの最後にモチベーションビデオをみんなで見ます。
昨年の入れ替え戦予選大会から、重要な節目の試合には選手の気持ちを高めるためにモチベーションビデオを毎回つくって見ています。
そのビデオを流す前に、特別に時間をいただき、私からメッセージを伝えさせてもらいました。

「お父さん」のお通夜に参列した報告。前述したお父さんの思い。
それとともに、たった2年ちょっとで地元の人たちが応援できるチームに育ち、愛される選手であることに私は誇りをもっている。オルカの選手は私の誇りであり、お父さんに代わって「ありがとう」と言いました。
もうこの年になると、涙腺がもろくなってしまっているのか、そのことを伝える際、不覚にも涙があふれてしまい、声が詰まってしまいました。いい年こいたおやじが何やってるんだ、って感じでしたが、それだけ思いがあふれてきてしまいました。
それでも、がんばって話をつなぎ、今日はアウェイだけど、アウェイじゃない。
どんなことがあっても、下を向かず、前を向いて、応援に来てくれているみんなを向いて、そして天を見上げて、「お父さん」にパワーをもって、絶対に勝つ!ということを強く伝えました。

試合がちょうど行われた時間、鴨川では「お父さん」の葬儀が営まれていました。
「お父さん」はすでに大和に飛んできていたように思います。
後半12分の得点はきっと「お父さん」がボールの後押しをしてくれていたのでしょう。
そして、オルカに勝利をもたらしてくれました。
「お父さん」がオルカを守ってくれました。

試合後、「お父さん」が着ていた、オルカの12番Tシャツが誇らしく輝いていました。


次戦はいよいよホームでの最終決戦です。
相手は静岡産業大学磐田ボニータ。WEST 1位のチームであり、好敵手です。
絶対に勝って、昇格決めます!
「お父さん」に最高のプレゼントをしたいと思います!!

みんなで南房総の歴史を動かしましょう!
9月11日は鴨陸へ、みなさん集結してください!!


大和の試合後、シルフィードサポーターのリーダーで懇意にしている方に、お互いの健闘を讃え合い、挨拶に行きました。
あまりの激闘に相当思いもお互い入っていたせいか、彼も私も涙を流しながら、堅い握手を交わし、次節のお互いの勝利を約束し合いました。

彼の姿を初めて見たのは昨年の中標津での試合会場でした。
6月下旬、大和シルフィードがアウェイでノルディーア北海道と対戦した際、 会場が道東の中標津となり、私も試合運営のようすを見に訪れていたのでした。
異常気象で気温わずか5度。そんな中、彼ともう一人のサポーターは半袖・短パンで90分間、声を出し続けていました。私はその姿に強く感動しました。

同年秋に入れ替え戦に臨むにあたって、大和シルフィードと練習試合をさせていただいた時、彼と再会し、初めて声をかけたのでした。
「中標津いましたよね?あの気温5度の・笑」
もうそれで、仲良くなれました。
当時オルカはチャレンジリーグ入りを目指していました。
彼からは「絶対に上がってください。待ってますよ」とエールをいただきました。

そして、今年、同じリーグで対戦することになりました。
今回で4回目となりますが、毎回お話しをさせていただいています。

大和のサポーターにはなんというか魂があります。
それは毎回対戦して思うことです。
だから、試合結果問わず、試合終了後になんというか、清々しさがあるんです。

サッカーを通じて、一喜一憂し、また、ご縁が広がっていく。
ある意味、バカみたいな暑苦しい話かもしれませんが、私はそういうのが大好きです。
だから、オルカもがんばれるんだと思います。


さあ、次はいよいよ最終決戦!
いろんな人のいろんな思いをもって、絶対に勝ちます!!

行くぞ!なでしこ2!! 

 2016・9・4vs 大和シルフィード_6441-S